2022/05/20
取りやすくなる育児休業。2022年4月から変わる改正育児・介護休業法
2021年6月に育児・介護休業法の改正があり、2022年4月から順次施行されています。「パパが育児休業をとりやすくなる」など、ニュースでご存じの方も多いことでしょう。
今回の改正で何が変わり、どのような影響があるのかを解説します。
そもそも育児・介護休業法とは?
育児・介護休業法の正式名称は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」です。働く人たちが仕事と育児、あるいは仕事と介護を両立できるよう支援することを目的としています。
法律制定の背景にあるのは、少子・高齢化社会の到来です。
育児と仕事の両立が難しいと思えば、女性は出産をためらってしまいます。育児のための休業を取りやすくすることで、出産を前向きに考える夫婦が増えることを国は期待しています。
高齢化社会が進むにつれ、高齢の親の介護に直面する労働者は増える一方です。介護のための休業制度を整えれば、介護しながらでも仕事を続けられます。
働く人たちが仕事を辞めることなく、育児・介護休業を取得しやすい環境にすることは、雇用の安定、ひいては日本全体の労働力不足の解消につながります。
2022年4月からの法改正ポイント
育児・介護休業法は過去にもたびたび改正され、育児休業期間の延長、介護休業の取得要件緩和などが盛り込まれてきました。
今回の改正では、主に育児休業にスポットを当てています。
厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は12.65%で過去最高になったものの、女性の81.6%に比べると大きな差があります。第一子の出産を機に退職する女性の割合も依然として多いことから、これらの状況を改善することが今回の改正の目的です。
では、改正のポイントを見ていきましょう。
1:育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務付け(2022年4月~)
育児休業を取得しやすいよう、事業主は研修の実施や相談窓口設置などの措置を講じることが義務づけられます。
2:妊娠・出産の申出に対する個別周知・意向確認措置の義務付け(2022年4月~)
労働者本人または配偶者から妊娠・出産の申出を受けた際、事業主は育児休業制度の周知と取得の意向確認をしなければなりません。面談や書面交付などの方法で行います。
3:有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和(2022年4月~)
派遣社員など有期雇用労働者が育児休業するには、2つの要件を満たす必要がありました。
①引き続き1年以上雇用されている
②子が1歳6か月までの間に契約満了することが明らかでない
今回の法改正では②の要件は残るものの、①の要件がなくなり、無期雇用労働者と同様の扱いになります。ただし労使協定を締結すれば、勤続1年未満の労働者を除外することは可能です。
介護休業でも同様に、「1年以上雇用」の要件は撤廃されました。
4:育児休業の分割取得(2022年10月~)
現行の育児休業は、原則として分割できません。改正後は、子が1歳になるまでの育児休業を分割して、2回取得できるようになります。
1歳を過ぎてから育児休業を延長する場合、現在は育休開始日が1歳・1歳半に限定されています。改正後は、開始日の柔軟な設定が可能です。
5:男性の育児休業取得促進の枠組み創設(2022年10月~)
主に男性を対象に、出生時育児休業制度「産後パパ育休」が創設されます。現行の育児休業とは別に取得が可能です。
原則として、休業の2週間前までに申し出れば、子の出生後8週間以内に4週間まで取得できます。初めにまとめて申し出れば、分割取得も可能です。
この「男性版産休制度」と称される枠組みによって、政府は2025年までに男性の育休取得率を30%にする目標を掲げています。
6:育児休業取得状況の公表の義務付け(2023年4月~、従業員数1,000人超の企業のみ)
育児休業の取得状況を年1回公表することが義務づけられます。
取りやすくなった育児休業
今回の法改正で、パートやアルバイト、派遣社員、契約社員でも育児休業を取りやすくなりました。男性の育児休業取得率が向上すれば、働く女性の負担軽減も期待できます。
「働きたいけど子どもも欲しいから…」「大企業の正社員じゃないから…」といった理由で働くことをためらっていた方でも、前へ進める土壌ができつつあります。
もしご自身が一歩を踏み出せなかった理由がそこにあるなら、この機会にぜひ働き方を検討してみてください。