2020/10/02
2020年に同一労働同一賃金がスタート!働く前に知っておきたい派遣法入門【前編】
働き方の選択肢として、当たり前になった人材派遣。その人材派遣のあり方に影響をあたえているのが労働者派遣法(以下、派遣法)という法律です。
派遣スタッフの方々にも重要な法律なのですが、その内容を知っている人は意外と少ないのではないのでしょうか?
今回は、仕事を探している方や、派遣で働いているスタッフのみなさんに、派遣法について紹介。【前編】【後編】にわけて、知っておいた方がよいポイントをわかりやすくご紹介します。
■派遣法とは?派遣法の歴史について
いわゆる派遣法は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」が正式名称です。柔軟に働けるメリットがある派遣社員ですが、正規雇用の社員よりも収入などの労働条件が不安定になりやすい傾向があります。
派遣労働という働き方が一般的になった現在の日本において、派遣労働者の権利を守るためにつくられた法律が派遣法なのです。
1986年に日本で初めて施行された派遣法は、今日に至るまで何度も改正が行われてきました。制定された当初は、まだ終身雇用や年功序列といった日本的雇用慣行が残っており、派遣社員は例外的な働き方という位置づけでした。
専門業務に限って派遣を認める制度設計であったため、派遣可能な業務は限定され、派遣期間も1年という上限が存在していました。
しかし、企業の人材派遣に対するニーズが拡大するにつれ、規制緩和の波はさらに強くなっていきます。大きなものとしては、1999年に派遣の適用対象業務の限定していたものが原則自由化となり、逆に派遣を禁止する業務を指定するものに変わりました。
2000年には、直接雇用を前提とする「紹介予定派遣」が解禁。2012年改正では、派遣会社の派遣料金の明示とマージン率の公開が義務化され、「日雇い派遣の原則廃止」「グループ企業内派遣の規制」「離職後1年以内に同じ派遣労働者の受け入れ禁止」など、派遣労働者の権利が強化されました。
■2015年改正のポイント
そして、2015年にも大きな派遣法の改正が行われました。
改正の目的として、「派遣労働という働き方、およびその利用は、臨時的・一時的なものであることを原則とするという考え方のもと、常用代替を防止するとともに、派遣労働者のより一層の雇用の安定、キャリアアップを図るため」といった文言が掲げられています。
この時の改正の大きなポイントは、次の3つです。
1.派遣期間制限の見直し
改正前の派遣法では、専門業務の「26業務」には期間制限がかからず、その他の「自由化業務」には原則1年最長3年の期間制限がかかっていました。改正派遣法では、この専門26業務かどうかという区分が廃止され、全ての業務に期間制限が生じるようになったのです。そして、新たな期間制限の基準として、「派遣先事業所単位」と「個人単位」の2つの単位で期間制限が適用されることとなりました。
具体的には、派遣先事業所単位の派遣受入可能期間は原則3年、個人単位の派遣期間は最長3年となりました。これによって、組織単位を変えれば同一の事業所に引き続き同一の派遣労働者が働くことができるのです。
ただし、派遣元で無期雇用されている派遣労働者や60歳以上の派遣労働者は対象外です。
2.派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ措置の義務化
改正前の派遣法では、派遣労働者にとって派遣期間終了後の雇用継続の保証はありませんでした。また、派遣労働者は職業能力形成の機会が乏しく、キャリアアップにも課題がありました。改正派遣法では、派遣労働者の直接雇用や無期雇用、その他安定した雇用継続の必要な措置などについて、派遣元企業への義務化を設けました。
そして、計画的な教育訓練やキャリアコンサルティングを義務付け、派遣先企業にも雇入れやキャリアアップ支援に必要な情報提供の努力義務と、正社員等募集情報の提供義務などが課されています。
3.派遣事業の健全化
以前は、派遣事業者には許可制の「一般労働者派遣事業」と届出制の「特定労働者派遣事業」2種類がありました。改正派遣法では、派遣業界全体の健全化と労働者保護を実現するために、すべての派遣事業者が国の許可要件を満たした「労働者派遣事業」に一本化されました。これにより、派業界再編も加速化しています。
このほか、知っておきたいポイントとして、派遣の雇用期間とされる上限3年とは別に「5年ルール」と呼ばれるものがあります。
これは、派遣法ではなく、労働契約法に基づくものです。複数回の更新により、派遣労働者の契約期間が通算5年を超えた際、派遣労働者の申し込みがあった場合は無期労働契約に転換しなければならないと規定しています。通算5年を超えると、契約期間の定めがない無期転換が可能になるというポイントを押さえておくとよいでしょう。
【後編】では2020年4月施行の同一労働同一賃金による、派遣法の改定ポイントについてご紹介します。
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